2022.6.1
ダマスクばらが開花しました。ブルガリアからの近況レポート
5月末 ブルガリア カザンラク エニオボンチェフ社の農場より、今年最初のダマスクばらの開花の知らせが届きました。頂いた写真とともに、5月のダマスクばらと農園の状況を皆さまにもお届けします。
”早春の新緑。バラの谷が、少しずつピンク色に色づいてきました。山からの新鮮な風が天国からローズの香りを運んできます。”
5月末から6月の上旬にかけては、ダマスクばらの収穫の季節です。農場では、ファミリーが普段の業務を中断して総出で収穫の作業を行うほど、一年で最も忙しい季節。
ブルガリアでは5月の平均気温は15℃程度。まだ「早春」の気候なんですね。
”この地域の空気、土壌、気候にある何かが、この素晴らしいローズオイルのアロマをつくりだしているのです。”
雄大なバルカン山脈の裾野に広がるカザンラクの街を囲む谷。
唯一無二のダマスクばらを育むための最適な条件が奇跡のように揃っていたこと。それがこの土地が「バラの谷」と呼ばれる所以なのでしょう。
エニオボンチェフのローズをはじめとした植物たちは、この雄大な自然からふんだんに湧き出す清らかな地下水をごくごくと飲み育ちます。そして、もうひとつ大切なのが、ローズたちにとっての「食べ物」である肥料。エニオボンチェフでは、ローズと、同じ農場で育てているラベンダーの蒸留を終えた花を堆肥にし、完全な有機肥料を作っています。
今年のダマスクばらが根を張った土は、貯えた水は、取り込んだ空気はどんなエネルギーに満ちていたのでしょうか。
多忙が極まる時期なので、まだ今年のダマスクばらの香りの特徴は聞くことができていません。皆さまと同じように私たちも、ダマスクばら水の到着を楽しみに待つ日々です。
今年は、ウクライナ情勢の影響を受け、収穫を目前にしてロシアからのガス供給が停止されたとの情報が入ってきました。代替供給源の確保により、現時点では大きな制限はないとのことですが、隣国の争いが引き起こす心理的な不安は計り知れないものです。
そんななかでも変わらず美しい花を咲かせたダマスクばらに、自然の力強さと、エニオボンチェフの農場で必死に働く人々の努力に感謝をせずにはいられません。
収穫の主役はロマ族の人々。この時期には、定住する土地を持たないロマ人を中心とした少数民族の人々が集まり、収穫の作業を行います。
ブルガリアはロマ人が多く暮らす国のひとつですが、定住をしないロマ人は医療等の公的なサービスを受けられず、非正規の仕事に就かざるを得ないことから貧困や差別が根強い問題となっています。
エニオボンチェフ社は、毎年必ず行われる収穫の仕事を通じてこういったマイノリティの人々が地域のコミュニティに受け入れられ、包摂されるような仕組みづくりも行ってきました。
そんなロマ族の人々にも、ロシアのウクライナ侵攻は大きな被害を与えています。
ウクライナの、40万人以上住んでいるといわれるロマ人もまた国からの避難を余儀なくされています。その状況の中でもロマ人は避難先、また同じ避難民の中でも差別を受け門前払いされたり、食糧にありつけないという事態が起きているのです。政府あるいは自治体からの制度的な支援を得ることができないロマ人は、個人やNGOの支援に頼るほかなく、それゆえに平等な扱いを受けないケースがあるというのです。
仲間たちがそんな状況に苦しむなか、今年もロマの人々は農園で収穫をしてくれています。
まだ日が昇ったばかり、新鮮な空気がダマスクばらの香りを運んでくる早朝の農園でローズの花を摘む姿は、笑顔に溢れていました。
彼女たちのように、すべてのロマ人が、マイノリティの人々が、少しでも平等に包摂される社会になることを祈らずにはいられません。
ダマスクばらの収穫や蒸留の状況、香りについては続報をお待ちください。
一日でも早く、平和が訪れますように。
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