2022.1.5
「陰陽五行説」― いにしえの智慧から見えてくるもの。
陰陽五行と Holistic Care 【vol.1】
新年。お正月の行事に、初詣、お年玉、七草がゆ、日本古来の習慣が色濃く残る年の始め。さらに親戚や懐かしい人に会う機会も多く、過去や未来、人との縁や血縁といった普段よりも長い時間軸で物事を考えたり感じたりする時期ではないでしょうか。
そんな長い時間に思いをはせるこの時期に合わせて、1月のコラムでは数回に分けてはるかな昔から受け継がれてきた伝承的な思想であり、お正月の風習など今の生活にも色濃く残る陰陽五行説と、さらにそれを暮らしにより良く生かす方法を特集していきたいと思います。
2022年は寅年ですが、この干支も陰陽五行説と深いかかわりがあるもの。
科学がなかった時代、わたしたちは生き抜くため、子孫を守るために、第六感まで働かせてまわりの環境や見上げた空やその先に広がる星々を詳細に観察し、そこに法則性を見出してきました。
そしてそれらの天体や宇宙と、身の回りの自然や自分が呼応していることに気付き、体系を作っていきました。陰陽五行説も、そうして生まれた法則性に基づいた体系のひとつです。
陰陽五行説は難しい学問のように感じますが、実は干支や二十四節気など私たちの生活のさまざまなところに慣習として組み込まれている身近なものであり、日本の様々な風習に大きな影響を与えてきました。
自然と共に生きていた時代の智慧を改めて学ぶことで、自然や宇宙と響き合う生き方のヒントが得れるかもしれません。
自然の理を陰と陽に分けた陰陽説と、万物の変化と循環を示した五行説
※陰陽勾玉巴
陰陽説はその名の通り、天と地、男と女、のようにあらゆるものが陰と陽に分類でき、お互いを抑え込んだり依存して助け合うという関係性が繰り返されるとされる思想で、古代中国で生まれたものです。現代においてもマクロビオティックで食品を「陰の食品」、「陽の食品」と呼んだり、生活の中でも使われる言葉でもあります。
そしてその中でも面白いのが、「陰極まれば陽となり、陽極まれば陰となる。」という考えがあり、また陰陽勾玉巴のイラストにあるように、陰の中にも陽があり、陽の中にも陰があると考えられているというところ。
善と悪のように単純に2つに分かつのではなく、互いに影響しながら循環していくものであり、陰の時にもその中にすでに陽の芽は生まれていて、陰が極まれば陽に転じていくのだ、というものです。
また五行説は、自然界に存在するすべてのものが「木、火、土、金、水」の5元素から成り立っていて、木があるから火が燃えて、火があるから土が肥えて、土の中に金(鉱物)が生じて、鉱物に水滴が生じて、水があるから木が育つ、とういように、物事が循環していく様子を捉えたものです。
そしてこの「陰陽」と「五行の循環」を組み合わせて、宇宙のリズムや自然の変化、人間の心と体の変化の関連を体系化して、より良く生きるための智慧としてきたものが「陰陽五行説」となります。
わたしたちの日々のバイオリズム、心、身体を見ていても、常に揺れ動いていて、とどまることはありません。そこに法則性があるのだとしたら・・・それを知ることは、自分をより良く生かすことにつながるのではないかと思えてきます。
わたしのバイオリズムを知り、整えるための Holistic Care でもある。
陰陽五行説はもともとは今から2500年以上前の中国で生まれ、天の気、地の気を読み様々な厄災を予測したり、また国家としてそれにどう対応していけばよいのかの指針として、また戦いにおいての判断のために用いられていたといわれています。
それが2000年くらい前から日本にも伝来し、原始的な国家の仕組みや暮らしの風習として取り入れられ始めたと伝えられています。
西暦や西洋文明が生活スタイルに大きく影響しはじめる明治以前までは、わたしたちの日々の暮らし、月ごとの行事、年単位での祭りごと、冠婚葬祭ほとんどすべてが、その意味を受け継ぎながら陰陽五行に基づいたものでした。
今でも土用の丑の日にウナギを食べる、新築の棟上げで白いお餅を巻く、風水でインテリアを決める、二十四節気、雛祭りや端午の節句、漢方や整体など様々な衣食住でその風習は残っていますが、その意味はほとんど伝えられないままとなってしまいました。
身近な風習の意味を知ることで、改めて自然と調和して生きることの大切さに気付いたり、自分のバイオリズムを知ることで、その時々にあった過ごし方が見えてきたり。
陰陽五行を学んでみると、実はもっとも古い Holistic Care なのだということがわかってきます。
次回の特集では陰陽五行説に基づいた具体的な暮らしへの取り入れ方をお伝えしていきたいと思います。
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