2021.10.12
社会にとって一番必要なコミュニティー。この世界を広げていきたいというのが今の私のミッション。(祥子さん 前編)
《プロフィール》
大阪府堺市で活躍中の祥子(さちこ)さんは、生まれも育ちも堺市。ひいおじいちゃんが建てた築90年の古民家で育ち、先祖から受け継いだ田圃(たんぼ)を耕しながら、福祉事業所に勤務してシニアボランティアと共に地域の高齢の方や障がいのある方を支援している。
その傍らでは、日常の生活が社会や家族中心で自分の魅力を忘れがちの女性が、女磨きという目標で切磋琢磨するオンラインコミュニティ「ビジョカツ®」の副代表を務め、さらにそんな女性達が企業とつながる「イロコトカ」を共同運営。また、バンドのボーカルとして、ヘビメタから童謡・子守歌まで幅広く唄うなどの音楽活動をしている。
https://www.instagram.com/rockinreira/
とても多才で精力的に活動されている祥子さんだが、世の多くの女性と同じように、内面では悩みや葛藤を抱えながら日々過ごしている。福祉事業所でシニアの方と一緒に障がいのある方を支えたり、ご自身の過去の葛藤や日々の葛藤をビジョカツに参加する女性達に伝えたりするなかで、逆に自分が励まされ助けられる側面も大いにあるようだ。
(取材:HANA ORGANIC 阿部)
福祉に農業に女磨きサークルに歌手にと、とても幅広く活躍されている祥子さん。
前編では、祥子さんの現在の活動と、そこにある思いについて語っていただきました。後編は、祥子さんの生い立ちからHANA ORGANIC との出会いまで。
<ビジョカツ(女を磨くオンライン・サークル)>
◆まず、現在活動されておられるビジョカツについてお伺いします。インスタグラムを拝見すると「女磨き」の活動と書かれていますが。
◇人には、その人それぞれの幸せな人生、やりがいがあるのだと思っています。ターゲット層は幅広く、中心は小さいお子さんを抱えたお母さんや、社会で働く女性で、日々の忙しさに追い立てられる女性が、忘れてしまいそうになるのは自分の容姿。自分で見て自分でがっかりしてしまう。それで外見磨きをする。そうしたら自信を失っていた内面も引き上がっていくんじゃないか、そんな思いで代表が立ち上げてくれたんです。
◆どんなきっかけでビジョカツを始めることになったのですか?
◇私自身、家庭の悩み、子育ての悩み、そういうコアな部分で生きづらさを感じていました。そんなときに、ビジョカツの代表とブログで知り合いました。初めて会って話したとき、自分達のあり方の話をして、子育ての話は出ませんでした。子育ての悩みではなく、その先にある自分達の未来の話をしたのです。私はこうなっている、と根拠のない自信みたいなお話ができたのがすごく大きかったです。そしてLINEグループに誘われて参加しました。
最初に参加したグループは10人でした。別に難しいことをするわけではなく、お化粧品や洋服、掃除の話などをしました。
◆インスタでは自撮り写真を積極的に投稿されていましたね。
◇ちょうど自撮りアプリが流行り始めた頃で、私はバンドやってたからカッコつけるのが得意で(笑)。
自撮りをすると精神面にも影響があることが、だんだんわかってきました。鏡を見るのと同じで、自分は心から笑えていないことに気付いたり。おもしろいなと思って、継続するようになり、今度は主催者になって自分のグループを持つようになりました。
主催者はそれぞれ得意なテーマを決めて活動します。お料理とか、お掃除とか。私のテーマは、体、心、環境、食、美の土壌を整える。自分がやらないかんことを人に教えてただけなんですけど(笑)。
<百姓>
◆インスタを拝見すると、祥子さんは非常に幅広く活躍されていますね。
◇わたしは自分のことを「百姓」と言っているんです。百の姓(百の職という語源的な意味で)、いろんなことをやる。日本人って昔はそうだった。笠売りながら米作ってるとか。そのスタイルでやっているんです。
◆先祖から受け継いだ田圃で、しかも無農薬でやっていらっしゃいますね。
◇無農薬は人に言われて始めたんです。何をするにしても、とにかく試してみないと気が済まないんです。それに、お金かけるのが嫌で。農薬にお金掛けても意味ない。除草剤かけても水切らしたら雑草生えてくるんです。除草剤いるん?ってなって。ちょうど教えてくれる人もいたから無農薬にして、何の罪悪感もなしに玄米を食べようと思ったんです。
お米って、収穫してもたいした金額にならないんです。だからみんな止めるんです。無農薬にしてちゃんとブランディングできたら、価値が上がって農家さん助かるやん、私助かるやん、って。最初はそれくらいのことしか考えてなかったんです。
先祖から受け継いだ田圃は、実はむっちゃ邪魔なんです。市街化調整区域だから土地に値段も付かないし、固定資産税は取られるし、負の遺産なんです。でも、そういう土地を持った以上、ほっとかれへん。
今も米作りが大好きかと言われたら、生業という感じ。あるもので、好きではない(笑)。けれど、作業をしたらスッキリするし、収穫したら良かったなとホッとしますが、お米が取れことに感動は喜びは正直言ってまだないです。自分の土地で取れたお米があるというのが普通の環境に育ったから。
でも、やっていれば、もしかしたら将来、ほかの農家のおじいちゃんおばあちゃんらがしんどくなったときに、助けたり手伝ったりできるかもしれない。今はとても無理だけど、自分が歳取って余裕もできたときに、田圃がたくさんあるこの地域を守る何かになればいいな、という思いを持ちながらやっています。
<福祉事務所>
◆シニアボランティアと共に障がいのある方を支援する福祉事業所にお勤めですが、祥子さんにとって、そこはどんな場所なのですか?
◇そこは、私を思いきり成長させてくれる場です。
メンバー(障がいを持つ就労者)はピュアで、常に真実を教えてくれる。絶対に嘘つかない。メンバーと一緒にいると、自分が純粋無垢に戻っていける。
障がいがあるっていうのは、多様性がある、個性があるということ。得意・不得意はお互い様という世界。ピュアだから優しい、絶対に人を否定しない。すべて包み込まれ信頼関係がある上でのやりとりができる。私達が忘れていることがそこにある。うちの事業所はそういうところなんです。社会にとって一番必要なコミュニティー。この世界を広げていきたいというのが今の私のミッション。
年齢は18歳から70代まで。働きたい、仕事がしたい人が集まる。地域のために働いて役立って、自分のやりがいにする。癒されたいんじゃなくて、仕事がしたいで集まる。人にありがとうって言ってもらうために頑張るメンバー。そこにお金が乗っかるとうれしい。稼げる、だからもっと頑張る。その取り組みでメンバー達は成長していく。
それに、「失敗してもいい、自分の感覚で生きろ」と言ってくれる上司がいる。このような世界が広がるように、ずっと携わっていきたいと思っています。
◆事業所の人達とはどこで知り合ったのですか?
◇出会いは田圃(笑)。耕作放棄地を無農薬の水田に戻すこと、人と人の交流を目的とした「さっちゃん家の田んぼプロジェクト」というものをやっているのですが、その一年目、自然栽培を指導してくれるうちのメンバーの繋がりで、同じように無農薬栽培での米作りを始めていた今の上司が視察に来られたのがきっかけです。
福祉はずっと気になっていたんです。妹は鬱病で亡くなった当事者、おばあちゃんは福祉に関係していた。自分は当事者の家族だし、自分も生きづらさを感じていたから、福祉って何なのか知りたかった。
見に行ったら、全然普通やんって思った。私より全然すごいって思った。この人達の凄さをもっと知りたいと思って、一緒に働かせてもらっています。
だから、今の仕事の出会いも田圃。祖母から「田圃は神事(かみごと)やで」と聞いて育ちました。そしてその言葉を同じように上司も私に言いました。もう、「こら、やらなあかん」と思いました。事業所では今もメンバーと共に無農薬の山田錦という酒米作りを中心とした米作りをしています。
収穫した山田錦で作る「金の鳩」
オンラインサークルで、田圃で、福祉の現場で。多様な世界の中で自ら学び励まされながら、「伝える」活動を通じて多くの女性達を応援してきた祥子さん。後半では祥子さんの生い立ちから HANA ORGANIC との出会いまでをお伺いしていきます。
≫優しい社会、優しい自分、女性の優しさ。そうなったらいいなと思っています。(祥子さん 後編)
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